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田窪一世さん (9ctnfcr2)2024/12/3 11:08削除ご感想、拝見しました。
今回も桑原家の観劇力(読解力)には驚かされることばかりです。
僕が意図的に仕掛けたことを的確に拾い上げてくださるだけでなく、こちらが無意識に書いたことを作者以上の解釈で受け止めてくださる。実に作家冥利に尽きるというものです。
千夏と絵里が同じという解釈はまさにご明察で、千夏は20代前半の頃の僕自身であり、絵里は30代の頃の僕自身の心情を託した人物たちなのです。
そして、「喫茶店のドアの外でいったん立ち止まり深呼吸をしてから元気よく店に入ってくる」いずみは、24歳の頃から40.年間ずっと人工透析を続けている我が愚妻、鶴屋紅子の分身なのです。
この物語には僕自身の人生があちこちに散りばめられていますが、桑原さんがお母様のことに思いを馳せてくださったり、他のお客様の亡くなった旦那様がフラメンコがお好きだったことを思い出してくださったり、自分が書いた拙い作品がお客様たちの人生と繋がっていくことに無上の喜びを感じます。
そして演技的にも「台詞を喋ってない人の演技が凄かった」という息子さんのご意見が僕たちにはとても嬉しいご指摘でした。
実は演技に関しては劇団創立以来の懸案で、36年間ずっと暗中模索、試行錯誤、切磋琢磨を続けて来ました。目指す演技は「リアル」なのですが、「リアル」にも様々な解釈があり、僕たちなりのリアルな演技をずっと追い求めて来たのですが、今回のお客様たちのご感想の中に「一体感を感じた」というものが多々あり、中でも「すごい没入感があった」と言ってくださった方がいました。
「フラメンコチームが笑うと私も声を出して一緒に笑ってしまった」「雷が鳴ったとき(あ、傘持って来るのを忘れた)と思った」など錯覚がたくさんあったと言ってくださいました。こう言った「リアル」に繋がる様々な感想こそが僕たちが求める演技にヒントを与えてくれるのです。
今回の「大きな銀杏の樹の下の小さな泉」は、もしかしたら劇団存続の可能性を感じさせてくれた舞台だったように思います。今回もご観劇本当にありがとうございました。